クリニックの経営状況を正確に把握することは、安定したクリニック運営と成長のために不可欠です。
今回は、単独経営する美容クリニックを例に、その確認方法などを説明します。

そもそも、なぜ経営状況を確認する必要があるのか?

そもそも、なぜ経営状況を確認する必要があるのですか?

クリニックの経営状況を把握することは、健康診断のようなものです。

クリニックが健全に運営されているか、どこに改善の余地があるのかを客観的に把握できます。これにより、問題が小さいうちに対処したり、将来の成長戦略を立てたりすることが可能になります。

コスト削減のポイントや、売上をさらに伸ばすための施策が見えてくることも多くあります。

クリニックの収支状況をどう把握するのか?

クリニックの収支状況をどう把握するのか?

クリニックの収支状況を把握するには、まず月ごとの売上高費用を詳細に分析することが重要です。

売上高は、施術の種類ごとの単価と件数を積み上げて算出します。

下記のような日報の中に施術毎の売上金額、初診・再来数や予約キャンセル数、その日の天候などの詳細な情報をスプレットシートなどで管理・把握していくことが、経営変化の激しい美容業界では大変重要となります。
また、スプレットシートと管理をすることで、前月分の売上状況の把握や前年対比による今月の売上・患者予測も質の高い数値で判断が行えるよになります。

このようなクリニックの日々の入力フォームの作成と運営実施の定着こそが経営判断のもっとも重要な日々のルーティン業務となります。

日々の施術別売上日報一例(スプレットシート管理)

施術内容初診数再来数合計初診売上再来売上本日の売上予約キャンセル数天気備考
フォトフェイシャル32529,400円24,000円53,400円1晴れコース1名
ダーマペン033045,000円45,000円0晴れコース2名
HIFU12329,500円62,000円91,500円0晴れコース1名
ヒアルロン酸注入213110,000円62,000円172,000円0曇りボリューマXC
ボトックス注入448119,200円128,000円247,200円1曇りボトックスビスタ
スキンブースター(肌育)20291,000円0円91,000円0晴れボライトXC、リジュラン
医療脱毛(全身)202196,000円0円196,000円1コース3名
医療脱毛(顔)10164,000円0円64,000円0晴れコース2名
合計151227639,100円321,000円960,100円3
比率55.6%44,4%66.6%33,4%11.1%

一方、費用は「固定費」と「変動費」に分けて考えると、より明確になります。

固定費(売上の増減にかかわらず、毎月ほぼ一定で発生する費用。)

  • 賃料: クリニックの立地によりますが、都心では高額になる傾向があります。
  • 人件費: 医師、看護師、受付スタッフなどの給与や社会保険料など。
  • 減価償却費: 医療機器や内装工事にかかった費用を、年数で分割して計上。
  • 広告宣伝費(月額固定契約分): Web広告やSNS運用などの固定費用。
  • リース料: 導入している高額医療機器のリース費用。
  • 保険料: 賠償責任保険など。

変動費(売上や施術件数に比例して増減する費用)

  • 材料費: ヒアルロン酸、ボトックス、薬剤、点滴、消耗品などの施術に必要な材料費。
  • 消耗品費: 患者が使用するタオル、使い捨てシートなどの消耗品。
  • 外注費(施術数比例分): 一部の業務を外部に委託している場合の費用。
  • 広告宣伝費(成果報酬型): 集客に応じた費用。

これらの項目を細かく分類し、毎月の数値を追うことで、収益構造が明確になり、経営判断のスピードと質を高めます。
下記は、クリニックの固定費、変動費の一例となります。

固定費の一例変動費の一例
賃料(家賃)

減価償却費
→内装工事費
→高額医療機器

広告宣伝費(固定部分)
→ウェブサイト保守
→アライアンス媒体(固定)

保険料
→施設賠償責任保険
→医療過誤保険
→火災保険
→地震保険

リース料・ローン返済
→医療機器

通信費・システム利用料
→インターネット回線
→電話代
→電子カルテ
→予約システム
→GoogleWorkSpace

事務消耗品費・備品費
→事務用品
→清掃用品

税金・公課
→固定資産税(償却資産税)
→事業所税
材料費・薬剤費
→薬剤(1次卸)
→薬剤(2次卸)
→材料費・注射剤
→消耗品
→ドクターズコスメ

広告宣伝費(変動部分)
→リスティング広告
→SNS広告
→アライアンス媒体(成果報酬)
→SEO、AI対策

水道光熱費
→電気代
→水道代
→ガス代

業務委託費
→清掃業務
→医療廃棄物処理
→検体検査
→税理士・社労士
→コンサルティング費用
→リクルーティング費用(成果報酬)

事務消耗品費・備品費
→ユニフォーム

交通費・交際費
→交通費
→旅費(セミナー参加など)

予約稼働率も経営状況に影響するのか?

予約稼働率も経営状況に影響するのか?

予約稼働率は美容クリニックの経営状況を測る上で非常に重要な指標です。これは、クリニックの予約枠に対して、実際にどれくらいの割合で予約が埋まっているかを示す数値です。

1日に提供できる施術枠が合計20枠あるとして、実際に15枠が埋まっていれば、稼働率は75%となります。稼働率が低い場合、それは潜在的な売上機会を失っていることを意味します。

予約稼働率を高めるためには、集客の強化はもちろん、予約システムの最適化や、キャンセル率を減らすための工夫も必要になってきます。

収支状況や稼働率から何が分かるのか?

収支状況や稼働率から何が分かるのか?

収支状況や予約稼働率を定期的に確認することで、様々な経営課題が見えてきます。

  • 利益率の把握
    売上から費用を差し引いた利益がどれくらい出ているかを確認できます。利益率が低い場合は、費用の見直しや単価の引き上げなどを検討可能になります。
  • コスト構造の把握
    固定費と変動費のバランスを見ることで、どの費用が経営を圧迫しているのかが分かります。広告費が高いのに予約稼働率が低い場合は、広告の効果検証が必要になります。
  • 経営の効率性
    予約稼働率が高いのに利益が低い場合は、施術単価が適切か、材料費がかかりすぎていないかなどを再検討する指標になります。
  • 将来の予測
    過去のデータを分析することで、今後の売上や費用の傾向を予測し、経営計画を立てる際の信頼のデータ、そして、根拠とすることができます。

これらの情報を総合的に判断することで、クリニックの強みや弱みを明確にし、具体的な改善策を立てられるようになります。

まとめ

1院のみを経営する美容クリニックであっても、その経営状況を正確に把握することは、安定的な成長と利益確保のために不可欠です。収支状況(固定費・変動費)と予約稼働率という二つの重要な指標を定期的に確認・分析することで、クリニックの経営現状を「見える化」できます。

これにより、コスト削減や売上向上、効率的な運営のための具体的な戦略を立てることが可能になります。数字と向き合い、適切な改善策を実行していくことが、美容クリニックを成功に導く鍵となります。

よくあるご質問

Q
美容クリニックの適正な利益率とはどのくらいですか?
Q
固定費を削減する具体的な方法はありますか?
Q
予約稼働率を上げるために最も効果的な方法は何ですか?
Q
変動費の中で特に注意すべき項目はありますか?
Q
経営状況の確認はどのくらいの頻度で行うべきですか?