2024年度、地方の小規模病院(100床未満)はかつてない経営危機に直面しています。医業利益の赤字割合は87.0%に達し、患者数はコロナ禍前に戻りません。しかし、この厳しい現状を打破する「希望」が存在します。それが「オンライン診療」です。今回は、単なるツール導入ではなく、地域医療を守り、病院経営を立て直すための戦略として、オンライン診療の可能性と具体的な導入ステップを、最新の事例や補助金情報を交えてご説明します。   

地域医療の「限界」をどう突破するか?
オンライン診療が拓く小規模病院の未来

地域医療の「限界」をどう突破するか?オンライン診療が拓く小規模病院の未来

「先生、足が悪くてバスに乗るのが辛いから、薬だけ送ってもらえないですか?」 「雪で道が閉ざされて、今週の予約には行けそうにないです。」

地方の小規模病院を守る先生方にとって、こうした患者さんの声は日常茶飯事ではないでしょうか。 人口減少と高齢化、そして止まらない医師不足。特に100床未満の小規模病院を取り巻く環境は、2024年度の診療報酬改定や物価高騰も相まって、まさに「複合的危機」の只中にあります。

しかし、この解決策として、テクノロジーの力は、物理的な距離や移動の壁をなくし、地域医療に新しい光を当て始めています。 今回は、地方の小規模病院こそが取り組むべき「オンライン診療」について、その真価と成功への道筋を紐解いていきます。

なぜ今、従来の「対面診療」だけでは病院経営が立ち行かないのか?

なぜ今、従来の「対面診療」だけでは病院経営が立ち行かないのか?

徐々に感じているかと思われますが、これから更に「患者が病院に来る」ことを前提としたビジネスモデルが、地域の人口動態と合わなくなってくると言う大きな課題です。

日本病院会の調査によると、2024年度の100床未満病院における医業赤字割合は約87%に達しました。さらに深刻なのは、コロナ禍が明けても外来患者数が2019年比で約15.5%も減少したまま戻っていないという事実です。この減少の背景には、感染不安だけでなく、地域公共交通の衰退や高齢患者の免許返納による「通院困難」という物理的な壁が存在します。   

「来てくれれば診察できる」のに、患者は「行きたくても行けない」。 このミスマッチを放置すれば、病院は収益を失い、患者は治療継続を諦め、重症化してから救急搬送されるという、誰も望まない結末を招いてしまうことになります。この構造的な課題を解決するには、「来られないなら、こちらから(デジタルで)繋がる」という発想の転換が重要となります。

オンライン診療は、小規模病院の「希望の処方箋」になり得るのか?

オンライン診療は、小規模病院の「希望の処方箋」になり得るのか?

オンライン診療は、患者と病院双方に「三方よし」のメリットをもたらす強力な今後の病院経営の戦略となります。

患者の「生活」を守る

1.患者の「生活」を守る

往復の移動時間や待合室での待ち時間が「ほぼゼロ」になります。特にリウマチや慢性疼痛などで移動が苦痛な高齢者や、仕事を休んで親の通院に付き添っていた家族にとって、その恩恵は計り知れません。「通院のハードル」を下げることで、高血圧や糖尿病などの治療中断を防ぎ、重症化を予防できます。  

2.医師の「時間」と「働き方」を守る

限られた人数の常勤医で回している小規模病院では、訪問診療へのニーズが高まる一方で、医師の移動時間が大きな負担となっています。安定期の患者をオンライン診療に切り替えることで、医師は移動時間なしに効率的に診療を行えます。空いた時間を、真に対面が必要な重症患者さんや、新規患者の対応に充てることが可能になります。  

医師の「時間」と「働き方」を守る
病院の「経営圏」を守る・広げる

3.病院の「経営圏」を守る・広げる

「遠いから」という理由で離脱していた患者を繋ぎ止めることができます。また、2024年の診療報酬改定では、情報通信機器を用いた初診料が253点(以前は251点)、再診料が75点(以前は73点)へと引き上げられ、対面診療との点数差は縮小傾向にあります。適切に運用すれば、外来機能の維持・強化に直結します。  

具体的にどのような「成功事例」があるのか?

具体的にどのような「成功事例」があるのか?

「高齢者にスマホは無理だ」という先入観を捨て、地域ぐるみで成功している事例があります。

例えば、医師不足に悩む三重県鳥羽市や長野県伊那市などの事例です。ここでは「医療MaaS(Mobility as a Service)」と呼ばれる、看護師が乗車した移動診療車を活用しています。 車両が患者の自宅近くまで行き、車内のモニターを通じて病院にいる医師が診察を行います。患者は看護師のサポートを受けられるため、IT機器の操作に不安がある高齢者でも安心して受診できます。

また、ある地方の小規模病院では、生活習慣病(高血圧、脂質異常症、糖尿病)の患者を対象に、2024年改定で新設された「生活習慣病管理料(II)」への移行と合わせてオンライン診療を提案しました。 「冬場の雪道運転が怖い」という患者に、「冬の間だけオンラインにしましょう。」と提案したところ、治療脱落率が激減。医師からも「画面越しに自宅の様子が見えるので、食生活のアドバイスがしやすくなった」と好評を得ています。

導入にあたって、まず何から始めるべきか?

導入にあたって、まず何から始めるべきか?

成功の鍵は、スモールスタートとDX基盤の整備です。いきなり全科で導入するなどの大掛かりな整備は必要はありません。

  1. ターゲットを絞る
    まずは「病状が安定している再診の患者」や「生活習慣病の患者」に限定して案内を始めることを検討してみましょう。特定疾患療養管理料の廃止に伴い、生活習慣病管理料への移行が進む今が、切り替えの好機です。
  2. クラウド型電子カルテの導入
    オンライン診療をスムーズに行うには、場所を選ばずにアクセスできる「クラウド型電子カルテ」が不可欠です。院内サーバー型に比べて初期費用が安く、災害時のBCP対策(データ保全)としても極めて有効です。
  3. 補助金の活用
    コスト面のハードルを下げるために、国の支援策を最大限活用しましょう。「IT導入補助金2025」や「医療情報化支援基金」など、電子カルテやオンライン診療システムの導入には多くの補助金が用意されています。これらを活用すれば、初期投資を大幅に抑えることが可能です。

まとめ
オンライン診療は「生き残り」をかけた経営戦略です

地方の小規模病院にとって、オンライン診療は単なる「便利ツール」ではありません。それは、人口減少社会において、限られた医療資源で地域医療を持続させるための、「病院経営の戦略」となります。

「病院に来られないなら、こちらから繋がる」。 この柔軟な姿勢こそが、患者からの信頼を深め、病院が地域にとって「なくてはならない存在」であり続けるための鍵となるでしょう。 変化を取り入れ、まずは一人の患者、一つの疾患から、オンライン診療という「未来への扉」を開いてみることも重要です。
病院へのオンライン診療導入でご困りの際には、アイラボにご相談ください。無料オンライン・カウンセリングも実施させていただきます。

よくあるご質問

Q
高齢の患者さんが多く、スマートフォンやタブレットを使えるか不安です。
Q
オンライン診療で「誤診」が起きないか心配です。
Q
対面診療に比べて収益が下がるのではありませんか?
Q
導入コストが高そうで、二の足を踏んでいます。
Q
どの疾患から始めるのがおすすめですか?

引用サイト