医療現場における「働き方改革」や「DX(デジタルトランスフォーメーション)」の必要性が叫ばれて久しい昨今ですが、多くの病院やクリニックでは、依然として紙ベースの連絡や、口頭伝達による情報共有が主流となっています。これらは伝達ミスや確認の手間を生み、現場の疲弊や残業時間の増加、運営コストの増大を招く要因となっています。
今回は、特別なプログラミング知識が不要で、低コストかつ手軽に導入できる「Googleサイト」を活用し、院内の情報共有を劇的に改善する方法をご説明します。
経営者視点でのコストメリットや、現場スタッフの業務効率化につながる具体的な活用事例をご紹介します。
なぜ、医療現場では「情報共有」がこれほどまでに難しいのか?

日々の診療業務に追われる医療現場において、スタッフ全員への確実な情報伝達は、経営者や事務長にとって長年の課題ではないでしょうか?
「掲示板に貼った通達が見られていない」「シフトの変更が伝わっていない」「マニュアルがどこにあるかわからない」といった声は、規模の大小を問わず多くの医療機関から聞こえてきます。
看護師、医師、コメディカル、事務スタッフと、職種ごとに勤務体系や使用する端末が異なるため、全員が同じタイミングで情報を確認することが物理的に難しいのが現状です。この「情報の壁」こそが、業務効率を下げ、無駄なコストを生む課題となっているのです。
Googleサイトを使えば、どのような院内ポータルが作れるのか?

Googleサイトを活用することで、院内の情報を一元管理する「院内ポータルサイト(内部向けホームページ)」を手軽に簡単に作成することができます。 具体的には、以下のような機能を備えたサイトを構築可能です。
(1)ドクター、スタッフ間での活用方法
- デジタル掲示板
- トップページに「院長からのお知らせ」や「重要通達」を掲載し、最新情報を常に表示。
- マニュアル・手順書の集約
- Googleドライブに保存された業務マニュアルや手順書のPDFを埋め込み、検索の手間を削減。
- シフト表・カレンダー共有
- Googleカレンダーを埋め込み、勤務シフトや会議室の予約状況、院内イベントの日程をリアルタイムで共有。
- 各種申請フォームへのリンク
- 休暇申請や備品購入依頼などのGoogleフォームへのリンクを設置し、ペーパーレス化を促進。
- リンク集
- 電子カルテメーカーのサポートページや、医学文献検索サイト、近隣薬局の情報など、業務で頻繁に使うリンクを整理。
これらが一つのサイトにまとまっていることで、スタッフは「ここを見ればわかる」という安心感を得られ、情報迷子になる時間を大幅に削減できます。
(2)院長、役職者など経営層向け活用法(カスタマイズ必要)
- 病院・クリニックの月別診療報酬・売上、収支状況の共有
- 医院の診療報酬、自費分などの売上状況と収支状況などを常に把握する仕組化。
- 各部門のスタッフ勤務状況・欠勤者情報の共有
- ドクター、スタッフの本日の勤務状況、欠勤者リストのリアルタイム把握。
- ドクター、スタッフの採用状況の共有
- 必要な人材の採用状況や教育状況などを常に把握し、業務を円滑に回すための情報共有。
院長、役職者など経営層の方に経営に必要な情報を常にアップデートした状態で確認が行える仕組みもGoogleサイトを活用して行えます。経営判断のスピードを増すためのツールでもあります。
導入することで、実際にどれくらいの「コスト削減」と「業務効率化」が期待できるのか?

最大のメリットは、「探す時間」と「紙のコスト」の削減です。 例えば、スタッフ一人が1日に「あの書類どこだっけ?」と探す時間が10分あるとします。スタッフが30人いれば、1日で300分(5時間)、1ヶ月で100時間以上の業務時間が失われている計算になります。院内ポータルで情報へのアクセスを最短化することで、この「見えない人件費」を削減し、本来の患者様へのケアに充てる時間を創出できます。 また、紙での配布物をデジタル化することで、用紙代、印刷代、トナー代といった物理的なコスト削減はもちろん、配布やファイリングにかかる事務スタッフの労力もカットできます。Google Workspaceをすでに導入している場合、追加費用なしで利用できるため、新たなシステム投資が不要な点も経営上の大きなメリットです。
「あの書類どこだっけ?」と探す時間が10分あれば
1ヶ月で100時間以上の業務時間が失われている計算
ITの専門知識がないスタッフでも、運用や更新は可能なのか?

「Webサイトを作る」と聞くと、HTMLやCSSといった専門的なコードを書く必要があると思われがちですが、Googleサイトはそのような知識は一切不要です。 操作感はPowerPointやWordに近く、ドラッグ&ドロップで画像やテキストを配置していくだけで、直感的にページを作成・更新できます。 「今月の担当医表を更新したい」「新しいマニュアルを追加したい」といった作業も、事務スタッフや現場のリーダーレベルで簡単に行えるため、外部の業者に委託する必要も、院内に専任のSE(システムエンジニア)を置く必要もありません。この「自分たちで運用できる」という点が、DXを継続させるための重要なポイントです。
患者の個人情報など、「セキュリティ」の面は大丈夫なのか?

医療機関として最も懸念されるのがセキュリティですが、GoogleサイトはGoogleの強固なセキュリティ基盤の上で動作しています。 Google Workspaceの有料版(Business Starter以上など)を利用していれば、サイトの公開範囲を「組織内のユーザーのみ」に限定することができます。これにより、検索エンジンにインデックスされることもなく、外部の第三者が閲覧することは不可能です。 また、閲覧できるスタッフをメールアドレス単位で指定したり、部署ごとにアクセス権限を変えたりすることも可能です。もちろん、患者の個人情報(氏名や病歴など)そのものをポータルサイト上に直接記載することは避けるべきですが、院内の業務フローや連絡事項の共有ツールとしては、紙の掲示板や回覧板よりも遥かにセキュアで確実な管理が可能になります。
まとめ
Googleサイトを活用した院内ポータルの構築は、多額の費用をかけずに始められる、医療DXの第一歩として最適です。 情報の分散を防ぎ、「探す無駄」をなくすことは、スタッフのストレス軽減に直結し、結果として医療の質の向上や患者様サービスの改善につながります。 まずは「院内の電話帳とリンク集」といった小さな範囲から作成を始め、現場の反応を見ながら徐々に機能を拡張していくスモールスタートをおすすめします。 最新のデジタルツールを賢く使いこなし、持続可能で効率的な病院経営を実現できればとおもいます。
よくあるご質問
- QGoogleサイトの利用には追加料金がかかりますか?
- A
無料のGoogleアカウント(Gmail)でも無料で利用可能です。ただし、病院としてセキュリティや管理機能を強化したい場合は、有料のGoogle Workspace(旧G Suite)の契約をおすすめします。すでにGoogle Workspaceをご利用中の場合は、プラン内に含まれているため追加料金はかかりません。
- Qスマートフォンやタブレットからでも見られますか?
- A
可能です。Googleサイトは「レスポンシブデザイン」に対応しており、パソコンで作ったページが自動的にスマホやタブレットの画面サイズに合わせて見やすく表示されます。訪問診療先や病棟移動中の確認にも最適です。
- Q個人のGmailアカウントで作成しても問題ないでしょうか?
- A
技術的には可能ですが、セキュリティと管理の観点から推奨されません。職員の退職時にアカウント管理ができなくなるリスクや、誤って一般公開してしまうリスクがあるため、組織として管理できるGoogle Workspaceのアカウントでの運用を強く推奨します。
- Q電子カルテと連携することはできますか?
- A
基本的にGoogleサイトは「情報表示・共有」のためのツールであり、電子カルテシステムと直接データベース連携することはできません。電子カルテは閉域網(オフライン環境)で運用されることが多いため、Googleサイトはあくまで「インターネットに接続できる環境での情報共有(マニュアル、通達、シフトなど)」と割り切って使い分けるのが一般的です。
- Qサイトの編集や更新は誰が行うべきですか?
- A
特定の担当者一人に任せきりにせず、各部署(看護部、事務部、リハビリ科など)に1〜2名の「編集権限者」を決めて分散運用するのが長続きのコツです。操作が簡単なので、各部署のお知らせは各部署で更新する運用フローを構築することをおすすめします。
動画での紹介
Googleサイトでの使い方をゼロから学べる動画のご紹介です。本格的な院内ポータルサイトを構築する方法を学ぶことができます。社内ポータルのご紹介となりますが、基本的に院内の情報共有サイトも同様に作成が行えますのでご確認ください。
