近年、サイバー攻撃の手法は巧妙化の一途をたどっており、特に「Infostealer」と呼ばれるマルウェアが大きな脅威となっています。これは、気づかないうちにPCから重要な個人情報を盗み出す悪質なソフトウェアです。病院やクリニックは、患者の氏名、住所、病歴といった機密性の高い個人情報を多数取り扱っているため、サイバー攻撃の格好の標的となり得ます。ここでは、Infostealerの脅威から大切な情報を守るための具体的な対策方法についてお伝えします。

Infostealerの脅威とは
どのようなものなのか?

Infostealerの脅威とはどのようなものですか?

Infostealerは、感染したPCに保存されているパスワード、クレジットカード情報、暗号資産ウォレットの秘密鍵などを根こそぎ盗み出すことを目的としたマルウェアです。このマルウェアに一度感染すると、PC内のあらゆる機密情報が犯罪者の手に渡るリスクがあります。特に、複数のサービスで同じパスワードを使い回している場合、芋づる式に被害が拡大する恐れがあります。病院やクリニックのシステムが被害に遭えば、患者の個人情報が漏洩するだけでなく、医療機関としての信頼を失い、経営に大きな打撃を与えることにもなりかねません。

病院・クリニックも
狙われやすい業種なのか?

病院・クリニックも狙われやすい業種ですか?

病院・クリニックがサイバー攻撃のターゲットになりやすい理由は、非常に価値の高い個人情報を扱っているからです。電子カルテに記載された病歴や診察内容、予約システムに登録された連絡先、そして会計システムに登録されたクレジットカード情報などは、悪意のある者にとって非常に魅力的な情報源となります。これらの情報が流出すれば、患者自身のプライバシー侵害だけでなく、二次的な詐欺被害などに繋がる可能性も否定できません。そのため、医療機関は高いセキュリティ意識を持ち、強固な対策を講じることが重要となります。

巧妙な感染手口から身を守るには
どうすれば良いか?

巧妙な感染手口から身を守るにはどうすれば良いか?

Infostealerは、不審なメールの添付ファイルや、一見無害に見えるポップアップ広告、さらには「私はロボットではありません」といったCAPTCHA(キャプチャ)を悪用した手口など、非常に巧妙な経路で感染を広げます。スタッフ一人ひとりがこれらの手口を理解し、警戒することが何よりも重要です。

  • 不審なメールやメッセージに注意を払う
    送信元が不明なメールの添付ファイルを開いたり、本文中のURLをクリックしたりしないように徹底する。
  • 怪しいポップアップ広告はすぐに閉じる
    「ウイルスに感染しています」といった偽の警告メッセージに惑わされないように注意が必要です。
  • 安易にソフトウェアをダウンロードしない
    信頼できる公式のウェブサイト以外から、ソフトウェアをダウンロードしないようにする。

これらの対策をスタッフ全員に周知徹底することが、感染を防ぐ第一歩となります。

今すぐできる!病院・クリニックで
実践すべき具体的な対策は?

クリニックに性感染症外来を導入するために、 どのような準備が必要か?

Infostealerの脅威から身を守るために、病院・クリニックのすべてのPCで、以下の対策を今すぐ実行することが大切です。

  • OSやソフトウェアのアップデートを徹底する
    OSやウイルス対策ソフト、ブラウザなどのソフトウェアは、常に最新の状態に保ちましょう。アップデートには、既知の脆弱性を修正する重要なセキュリティパッチが含まれています。
  • 多要素認証(MFA)を利用する
    パスワードだけでなく、スマートフォンに送信される認証コードなど、複数の要素を組み合わせて本人確認を行う多要素認証を導入しましょう。これにより、万が一パスワードが盗まれても、不正ログインを防ぐことが可能になります。
  • パスワードを厳重に管理する
    スタッフ一人ひとりが、推測されにくい複雑なパスワードを設定し、使い回しをしないように徹底しましょう。パスワード管理ツールを活用するのも有効です。
  • ウイルス対策ソフトを導入する
    信頼できるウイルス対策ソフトを導入し、常に最新の状態に保ち、定期的なスキャンを実施しましょう。

これらの対策を継続的に行うことで、セキュリティレベルを大幅に向上させることが可能です。

まとめ

Infostealerは、病院・クリニックが扱う機密性の高い個人情報を狙う、深刻な脅威です。しかし、スタッフ全員が危険性を正しく理解し、OSやソフトウェアのアップデート、多要素認証の導入、パスワード管理の徹底、不審な手口への警戒といった対策を継続的に行うことで、そのリスクを大きく減らすことができます。大切な患者さんの情報を守ることは、医療機関としての信頼を守ることにも繋がります。今できることから始め、強固なセキュリティ体制を構築していきましょう。

インフォグラフィック:Infostealerの脅威と対策

Infostealerとは何か?

気づかれないうちにPCに侵入し、あらゆる機密情報を盗み出す悪質なソフトウェアです。特に価値の高い個人情報を扱う医療機関は、格好の標的とされています。

Infostealerが狙うのは、パスワードから電子カルテのログイン情報まで、極めて広範囲なデータです。

最も巧妙な手口:「私はロボットではありません」の悪用

一見無害な認証プロセスを装い、ユーザー自身にマルウェアを実行させる、非常に洗練された攻撃の流れを解説します。

偽の認証画面

ユーザーに偽の「私はロボットではありません」画面を表示し、信頼させる。

異常な指示

キーボード操作(Win+R)と貼り付け(Ctrl+V)を指示。正規の認証ではありえない手順。

コマンド実行

ユーザーは気づかないうちに、クリップボードに仕込まれた悪意のあるコマンドを実行。

感染完了

InfostealerがPCに感染し、情報窃取を開始する。

今すぐ実践すべき多層防御戦略

単一の対策では不十分です。技術的な対策と、スタッフ一人ひとりの意識を組み合わせた、多層的な防御体制を構築することが不可欠です。

🛡️

技術的防御の徹底

OS・ソフトの更新、ウイルス対策ソフトの導入と定期スキャンを徹底します。

🔑

認証の強化

多要素認証(MFA)を必須とし、パスワードの使い回しを禁止します。

🎓

スタッフ教育

不審なメールや広告への警戒心を高めるため、定期的な研修と情報共有を行います。

🖥️

利用ルールの徹底

業務PCと私用PCの分離を徹底し、信頼できないソフトのインストールを禁止します。

対策の効果:リスクの劇的な軽減

多層防御を実践することで、Infostealerによる情報漏洩リスクを大幅に低減させることが可能です。

よくあるご質問

Q
スタッフの私用PCが感染した場合、業務PCにも影響しますか?
Q
医療システムや電子カルテもInfostealerの標的になりますか?
Q
従業員のセキュリティ意識を高めるにはどうすればよいですか?
Q
ウイルス対策ソフトを導入しているのに、なぜ感染してしまうのですか?
Q
患者から「個人情報は大丈夫か?」と聞かれたら、どう答えるべきですか?

厚生労働省提供
サイバーセキュリティ対策チェックリスト

厚生労働省が「医療機関等におけるサイバーセキュリティ対策チェックリスト」を提供しております。まずは、病院・クリニックで重要なサイバーセキュリティ対策状況の基本をこちらのチェックリストで確認を行うことで課題を明確化することから初めて見ましょう。